大分中津 日本料理「筑紫亭」を訪ねて

大分中津 日本料理「筑紫亭」を訪ねて

大分県中津市は北九州の小倉と温泉で有名な別府の真ん中辺りに位置する。最近は福澤諭吉の出身地として話題になった。そして、中津は黒田官兵衛が築いた城下町だ。その一角に創業130年を迎える筑紫亭が優美な佇まいを誇っている。令和4年、文化庁の「食文化あふれる国・日本」の文化認定事業で、全国で4つしか選ばれなかった料亭の一つとして名を連ねた。残暑の厳しい日、女将の土生(はぶ)かおるさんにお話を伺った。

料亭は2018年にミシュランガイド熊本・大分特別版で一つ星を獲得、2023年には日本料理WEST百名店にも選ばれています。筑紫亭の料理の魅力は何でしょうか?

料理で心がけているのは自然のもの、旬のものを出汁で引き出し味を引き立てることでしょうか。中津という土地は食材の宝庫です。景勝地、耶馬渓から山国川を伝い、山の養分が遠浅の海に流れます。そのおかげで新鮮な魚介類が豊富に捕れるわけです。添加物を使わず、時間をかけ、丹精を込めた料理を召し上がっていただいて、お客様から体の細胞が喜んでいるようだと評されたことがあります。

料理長は息子さんでしょうか?

はい、料理長としては4代目になります。大学を卒業後、滋賀県の有名な料亭、招福楼にて6年間修業をして中津に戻ってきました。現在はオーナーシェフとして、料理にわき目もふらず打ち込んでおります。新鮮な鱧のにぎり、しゃぶしゃぶは、他では味わえない特別な料理ですので、ぜひ、召し上がって欲しいと思います。鱧の小骨を調理するのは大変な作業になりますが、中津にはそうした料理人の伝統が息づいています。京都の料理人に鱧の調理法を教えたのは中津の人だと言われています。

素晴らしい木造の建築物ですね?

建物は、国の登録有形文化財として指定を受けています。私がこの家に嫁いだ時、先代が愛情を込めて築いたこの家屋は日本文化の粋があるように感じられ圧倒されました。最近、逝去された世界的な建築家、槙文彦さんが筑紫亭に来られた時、現在の技術や材料で、この建物を復元するのは不可能だから、しっかり守ってくださいと言われました。部屋の中に掛けられた福澤諭吉や山岡鉄舟、河野大通老師などの書や軸も大切に守っていきたいと思っています。実は筑紫亭で食事をされるお客様はお部屋でゆっくり時間を楽しまれる方が多いんですよ。3時間も4時間も過ごされて名残惜しそうにお帰りになります。今風の言い方ですが、建物の中のどの場所を切り取ってもインスタ映えするところばかりとお客様から感想をいただきます。

ベルリンフィルのメンバーの方も来日公演の時には立ち寄られるとか?

そうです。とってもお料理を気に入っていただいて。大広間で小さなコンサートをしたこともありました。日本家屋で西洋の楽器の音の響きが違うようです。

私どもは食を通して、日本の伝統文化の良さを発信していきたいと思っています。そのためには、まずは海外のお客様が中津に訪ねて来ていただきたいですね。筑紫亭の日本料理は、中津という豊かな土地を反映したものです。中津のことを世界の人に知ってもらいたいと思っています。

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