マダム・バタフライと『沈黙』

マダム・バタフライと『沈黙』

外国人にとって長崎といえばもちろん被爆地としてその名前を知る人は多いだろう。

オペラ好きの外国人には、プッチーニ作のオペラ『マダム・バタフライ(蝶々夫人)』(1904)の舞台が長崎だと思っている人も少なくないだろう。アメリカ海軍士官のピンカートンと日本人の「芸者」蝶々さんとの悲恋の話。舞台設定も主人公も、グラバー邸とその住人がモデルではないかという説は受け入れやすい。異国趣味のストーリーに個人的な感情移入は難しいが、作品自体は根強い人気で繰り返し演じられているようだ。

そして、近年、外国の若い人にとって長崎でイメージを膨らますのはイギリスの作家、カズオ・イシグロの存在であり、遠藤周作の小説『沈黙』(1966)からであろう。

2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロは5歳までを長崎で過ごした。彼の初期の作品『遠い山並みの光』(1982)、『浮世の画家』(1986)はいずれも彼の想像上の長崎が題材になっている。イシグロ・ファンがこの地を見逃すはずはない。

そして、数年前に、マーティン・スコセッシ監督の映画『沈黙-サイレンス-』(2016)がリリースされた。監督が数十年来温めていた企画であったこと、また、日本では窪塚洋介の出演もあり、話題となった。映画の原作は世界10数か国語に翻訳されている遠藤周作の小説だ。小説と映画の効果で長崎は外国でも知名度が高まったかもしれない。ちなみに、長崎駅から車で約40分、小説の舞台となった海岸の地に遠藤周作文学館がある。

尚、日本の若い人にとって長崎といえばテーマパークのハウステンポスが有名だろう。歌手の福山雅治がこの地の出身だと知るファンも少なくないに違いない。

*エッセイの全文はこちらをご覧ください。

近世長崎点描  シリコンバレーと二枚腰|柳基善 千年の旅

 

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